共有物分割請求の全面的価格賠償の要件


共有物分割請求で全面的価格賠償が認められるためには

  • 1,当該共有物を共有者のうちの特定の者に取得させるのが相当であること
  • 2,価格が適正に評価され、当該共有物を取得する者に支払能力があって、他の共有者にはその持分の価格を取得させることとしても共有者間の実質的公平を害しないこと

の要件を満たす必要があります。この2つの要件について検討します。

1,当該共有物を共有者のうちの特定の者に取得させるのが相当であること

取得希望の共有者がその不動産に居住している場合については相当であると認めることにほぼ問題はありません。

では、住んでいない場合には相当と認められないかというとそうではありません。取得を希望することが合理的であると裁判所に判断されれば住んでいない場合であっても相当と認められます。

例えば、共同売却しようとしても共有者間の対立が激しくて共同売却できない場合などで売却をするために共有者の1人が他の共有者の持分買取を希望する場合があります。このような場合でも取得が相当と認められることがあります。

2,価格が適正に評価され、当該共有物を取得する者に支払能力があって、他の共有者にはその持分の価格を取得させることとしても共有者間の実質的公平を害しないこと

原則として裁判所が選任した不動産鑑定士による評価額によって判断されることになります。

ここで当事者のどちらかが選任した不動産鑑定士が作成した鑑定書でよいかが問題となりますが、不動産鑑定士といえども、当事者のどちらかが選任した鑑定士であれば依頼をした側に有利な鑑定書が作成される可能性が高く、裁判所が適正な評価と認めることは殆どありません。

ただ代償分割によること自体に争いがなく金額のみの争いである場合でかつ不動産の金額もさほど多額ではなく当事者のどちらが提出した不動産業者の査定書であっても価格が適正に評価されたものと判断されることもあります。

また代償金支払能力の証明は預金通帳のコピーか残高証明書を提出するのが一般的です。他の不動産を所有しているからいいではないかという意見を持たれる方もおられますが、他に価値がある不動産を所有していたとしても現金化されていない状態では代償金支払ができるか不透明ですのでこのような場合には代償金支払能力があるとは認められません。また金融機関からの融資によって証明しようとする方もおられますが、一般的に都市銀行はこのような形態での不動産担保融資を認めない事が多くまた仮に信用金庫などでこれを認めたとしても融資証明書を出してもらうことはなかなか難しいという問題もあります。そのような実情もあるので裁判官としては特に取得希望者が居住しているような場合で融資によって代償金支払いができそうだと見込まれる場合は和解による解決を勧告してくる事案も多いです。

著者:弁護士・福本 悦朗
東京弁護士会所属・福本法律事務所代表弁護士
共有不動産の持分売却に関して10年以上の実績を持つ。
1992年 早稲田大学卒業
1994年 司法試験合格
1997年 弁護士登録
2001年 福本法律事務所開設


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